Medical Tribune  2004年10月14日号 / Vol.37 NO.42 / P.54

 
大気中のアンモニアガスが唾液腺癌の原因に

〔ワシントン〕 海軍保健研究センター(カリフォルニア州サンディエゴ)とカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD,カリフォルニア州ラホヤ)家庭医学/予防医学のEdward Gorham博士らは,症例数はまだ少ないが米国で増加傾向にある唾液腺癌について,原因と考えられるアンモニアガスとの関連性を,第 6 回国際頭頸部癌学会で報告した。

白人男性への影響大

Gorham博士らとサウスカロライナ医科大学(サウスカロライナ州チャールストン)のTerry Day博士は,サウスカロライナ州46郡の唾液腺癌死亡率について米疾病管理センター(CDC)のデータベースを使って調査を行い,郡ごとの大気中アンモニア量と比較した。その結果,46郡の唾液腺癌死亡率と1996〜2000年の同州の癌登録から,アンモニアガス量と白人の死亡率の間には相関関係があることがわかった。

しかし,この傾向は女性では認められず,同疾患における死亡の男女比は 3 対 1 で統計学的に有意であった。アフリカ系米国人男性では1.1と,有意ではなかった。Gorham博士らによると,男性の比率が高いことについて,アンモニアへの職業的曝露による吸入が原因である可能性が高いという。

各郡のアンモニアガス量のデータは米環境保護局の大気汚染ガスについての記録から得られた。各郡の病院,医科・歯科施設からのデータも入手し,1997〜98年に唾液腺癌により死亡したのは174例であった。

同博士は「郡により大きく違う大気中アンモニアガス量が白人の唾液腺癌の死亡に影響していることは確実である」と結論した。アンモニアは胃癌への発癌性が知られているが,これはウレアーゼの強い活性によりアンモニアを産生するHelicobacter pylori感染によるものであるため,唾液腺癌とは結び付けられていなかった。

同博士は「原子爆弾の被爆生存者の受けた放射能や放射線療法の唾液腺癌との関連性はよく知られているが,それ以外の原因についてはほとんど知られていなかった。また,各種の大気汚染のなかで,二酸化イオウと他の癌との関連は指摘されているが,唾液腺癌に関する報告はない」と述べた。