日本唾液腺学会
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第59回日本唾液腺学会 総会並びに学術集会
 

会 長:杉谷 博士(日本大学 生物資源科学部)
副会長:田隈 泰信(北海道医療大学 歯学部)

平成26年12月6日(土曜日)、文京学院大学本郷キャンパスにおいて第59回総会並びに学術集会が開催されました。
 今回は、従来通りの唾液・唾液腺に関する基礎的研究、臨床および病理診断学的研究、唾液腺疾患や唾液腺腫瘍の症例検討の演題発表に加え、杉谷会長により特別講演1題と話題提供講演2題が企画されました。
 特別講演は、日本大学 生物資源科学部の加野 浩一郎先生を講師としてお迎えし、「成熟脂肪細胞から多能性細胞をつくる-自発的な脱分化と多能性獲得-」というテーマでお話をしていただきました。加野先生は、我々の体表面にたくさんある成熟脂肪細胞から、高い増殖能と多分化能を持つ脱分化脂肪細胞(dedifferentiated fat cell : DFAT)を培養する方法を確立され、再生医療や臨床への応用に向けての研究を推進しておられます。再生医療の主役となる多能性細胞の作成方法や最新の知見のお話しは、たいへん刺激的で、唾液・唾液腺研究の今後の展望を考えるうえでも示唆に富んだものでした。

また話題提供講演では、神奈川歯科大学 顎顔面外科学講座の岩渕 博史先生と岡山大学 医歯薬学総合研究科の松尾龍二先生が、「唾液分泌」に関するホットな話題を提供してくださいました。

ドライマウスがご専門の岩渕先生は、「ドライマウスを再考する-唾液分泌量減少の全身への影響と質的診断の試み-」と題して、「唾液分泌量の減少による障害は口腔局所だけの問題か」「唾液分泌量の減少のみで全ての病態を説明できるのか」という二つの切り口から、さまざまな症例やデータを示され、「唾液の質的・量的変化がもたらす影響は、全身に及ぶものとして考えるべきではないか」と問題提起をされました。

松尾先生は、「味覚障害と唾液分泌の重要性-基礎研究からの提言-」をテーマとして、口腔乾燥症、唾液欠乏症のときなどに起こる味覚障害について、「味物質の溶解」「味受容器の保護」といった観点から、ラットの実験データを用いて解説してくださいました。さらに唾液・唾液分泌が味覚に影響を及ぼす一方で、味覚によって唾液の成分や分泌が変化するという側面があることに触れ、「唾液分泌・味覚・口腔感覚・食生活は一体(reciprocalな関係)である」とのお考えを示されました。 公募の演題は、医・歯・薬・看護の様々な分野から近年最多の32題(基礎的研究17題、臨床的研究および病理診断学的研究9題、症例検討6題)のエントリーがありました。内容も、病態、分泌、唾液の応用、ストレスや遺伝子との関係など多岐にわたり、唾液・唾液腺研究の幅の広さ・深さが改めて感じられました。
  平成27年度の学会奨励賞は2題に授与されました。

<基礎的研究>
「マウス唾液腺細胞におけるCD133陽性細胞の機能解析」

○田中準一・安原理佳・入江太朗・深田俊幸・福島美和子・河野葉子・美島健二
(昭和大学歯学部口腔病態診断科学講座口腔病理学部門)

<臨床的研究および病理診断学的研究>
「唾液腺導管癌における免疫組織化学的バイオマーカーの予後因子としての意義―多施設共同研究による147例の検討―」

○高瀬聡一郎 1)・多田雄一郎 2)・川北大介 3)・加納里志 4)・清水顕1)・小澤 宏之5)・ 塚原清彰 6)・大上研二 7)・佐藤雄一郎8)・長尾俊孝 9)

1) 東京医科大学耳鼻咽喉科学分野
2) 国際医療福祉大学三田病院頭頸部腫瘍センター
3) 名古屋市立大学大学院耳鼻咽喉・頭頸部外科
4) 北海道大学病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科
5) 慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科
6) 東京医科大学八王子医療センター耳鼻咽喉科・頭頸部外科
7) 東海大学医学部耳鼻咽喉科頭頸部腫瘍センター
8) 新潟県立がんセンター新潟病院頭頸部外科
9) 東京医科大学病理診断学分野

当日は111名の参加があり、専門分野の壁を越え、時間を忘れて、活発な議論や情報の交換が行われました。学生や若い研究者の参加、研究発表も年々増えており、今後が期待されます。さらに、研究機関向けの機器やオーラルケア製品の展示もあり、「広く唾液、唾液腺に関する諸研究の知識の交流、啓発」(会則第2条)という本会の目的を十分に達成した一日となりました。

第60回学術集会は、平成27年12月上旬に、同じく文京学院大学において開催を予定しており、田隈 泰信(北海道医療大学 歯学部)が会長を務めます。
  どうぞよろしくお願いいたします。